
群馬県邑楽町にある中野沼。印旛沼や八郎潟と同じように、中野沼は東部と西部に分かれています(規模はかなり小さいですが)。



今回の外来魚駆除大作戦が行われたのは中野沼の西沼。ここはマミズクラゲをはじめとした希少な動植物が生息していることから沼そのものが町の天然記念物として指定されており、釣りも禁止されています。年に2回行われる駆除釣り大会の時にだけ釣りが許可される。

それだけ手付かずの沼だったらさぞや大会時にはバスも釣れるんでしょうね、と思いきや昨年は3尾程度、今回も155人の参加でたった6尾しか釣れなかったのでバスもある意味中野沼の希少種だったりします(苦笑)。各地の外来魚駆除ではありがちな話ですが、釣れる魚のほとんどはブルーギルでした。


中野沼における外来魚駆除大作戦は今回で5回目を迎えました。参加者の多くは地元の子供たちとその親御さん。長年この釣り大会を続けていると、特に子供連れの親御さん達からこのような意見が上がり始めた。
「中野沼の外来魚を減らすというのはいいのだが、釣った魚を殺処分するというのは子供たちへの教育上好ましい事ではない」
「外来魚とはいえ命あるもの、何とか殺さずに済む方法はないものか」
こうした意見はもっともなことで、主催者である邑楽町教育委員会においても同じ葛藤を抱えていました。けれども、特定外来生物に指定されている魚種は外来生物法によって生体移動が禁止されている。これまでずっとこの部分が高いハードルであり、殺処分以外の方法というのは見出せなかった。
それにしてもこの駆除釣り大会、地元の教育委員会が主催というのも全国的に珍しいケースと言えるかもしれない。勿論その主目的は中野沼の外来魚を減らすという事です。これが第一であることは間違いない。

けれども教育委員会である以上、教育的な側面の理由もあります。子供たちに対し、釣り大会を通じて自然に触れ合うことは勿論、地元中野沼の価値を知ってもらう事、外来魚問題について考えてもらう事も大事な目的と捉えています。
今回の外来魚駆除大作戦の開催に先立ち、邑楽町教育委員会は環境省からオオクチバスとブルーギルの飼養許可を取得しました。町内の数箇所の施設においてそれらを展示し、中野沼の自然というものを子供たちはじめ町民の皆さんに広く知ってもらうようにした。オオクチバスの余剰分に関しては管理釣り場で引き取ってもらった。いずれも、問題がないことを環境省に確認しながら進めてきました。
町の教育委員会がバスの飼養許可を取得するなんて前代未聞です。これを実現させるにあたっては大変な労力、手続きを要したそうです。それでもそれを成し遂げたのは、子供たちに命の尊さを伝えたいがため。命を粗末にしてはいけないということを子供たちに教えたいという教育者としての強い理念。
役所にも、こんなに熱い気持ちで仕事に向き合う人達が居たんだ。とにかく驚いたし、その熱意と実行力には感服と尊敬の念を抱かずにはいられない。
無駄にバスを殺すのでなく有効に活用する。これだったらバスアングラーとしても賛同できる。あくまでその活用方法次第ですが、今後は駆除にも積極的に協力していく時代が来るのかもしれない。
2017年5月27日。この日、バスの未来が大きく変わった気がします。
